福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

久保下 亮

連合大学院研究生

はじめまして。連合小児発達学研究科博士課程1年および福井医療短期大学で教員をしております久保下と申します。

私は熊本県出身で理学療法士の資格取得後,福岡県にて理学療法士として17年間働いてきました。そんなある日,「1度の人生だから後悔するよりチャレンジだ!」という思いで,住み慣れた九州を離れ,平成27年度より,2つの目標を掲げ福井県に飛び込んでまいりました。

1つ目の目標は,障がい者スポーツトレーナーとして,平成30年開催の「福井しあわせ元気国体・福井しあわせ元気大会」でのトレーナー活動を行うこと。 2つ目の目標は,連合小児発達学研究科博士課程にて小児発達学を学ぶことです。

まず,私が小児理学療法分野に携わるきっかけや,障がい者スポーツトレーナーとして,トレーナー活動を続けている理由からお話します。

私には高校1年生,中学2年生(双子)の息子が3人います。その中の一人,二男が脳性麻痺を患っています。

ある日,恩師の研究室へと呼ばれ「久保下君,小児理学療法の分野に進む気持ちは無いかい。親御さんの気持ちも分かる理学療法士を目指して欲しいんだ。」と言われました。

私が毎週のように,二男と一緒に療育センターへ通っていることを知っておられた恩師が,私の将来を見据えたお誘いだったのではないかと思います。

その後,恩師による半ば強引な説得ではありましたが,私は小児理学療法の分野に足を踏み入れることとなりました。

そして,二男が小学生のとき,私がいつものように小学校へ送っていくと,小学校の玄関先に座り,運動場でサッカーをしている友人たちをしばらく眺めていました。その二男の姿から,本当は友人たちと思いっきりスポーツしたいのに,下肢の障害のため,その思いをぐっと我慢しているんだと感じ,胸が締め付けられる思いになりました。そして,その日の夜,私は息子に,福岡県障がい者スポーツ協会が主催しているチャレンジスポーツ(障がい児が車いすスポーツにチャレンジする企画)の存在を教え,共に障がい者スポーツの道へ一歩踏み出すこととしました。

現在,二男は車いすテニス選手(ジュニア)として,多くの大会に出場しています。二男は,車いすテニスという障がい者スポーツと出会い,全国に友人の輪を広げ,また友人たちと切磋琢磨して成長しています。このように,私はトレーナー活動を行いながら障がい者スポーツの魅力に触れ,刺激ある人生を送れているのも,あの時,勇気を出して一歩踏み出せたおかげだと思っています。

障がい者スポーツには,肢体不自由児者,視覚・聴覚障がい児者,知的障がい児者が参加するスポーツとさまざまあります。楽しむスポーツから競い合うスポーツまで,レベルもさまざまです。障がいを持った子どもたちには,スポーツの楽しさや,家族・仲間たちと目標を掲げチャレンジする素晴らしさなど,多くのことを学んでもらいたいと思っています。

私は今後もトレーナー活動はもとより,障がい児者スポーツの普及活動にも力を入れて行きたいと思っています。

次に,小児発達学を学びたいと思ったきっかけです。

以前,私が勤務していた療育センターには,さまざまな疾病を患った方々が入院および通院されていました。疾病によっては,肢体不自由と知的障がいとを合併している方々も多く居られました。

私は理学療法士ということもあり,治療に当たる際,どうしても身体の活動面に着目する傾向がありました。しかし,子どもたちとより良い関係性を築いていくために,もっと情緒面や認知面の発達を理解しておく必要性があると思いました。

また,療育センターにて勤務していたとき,養育者から子どもとの接し方の困難さや,周囲の環境から受けるストレスの相談を受けることがしばしばみられました。このような相談を受けるようになったことで,私は養育者と子ども間の愛着形成や親子関係に興味を抱き,多くの論文や書籍を読み,子どもたちの脳の発達に興味を示しました。

現在,子どもの脳の発達,こころの発達において多方面から研究が進められています。

科学的に多くのことが分かってきていますが,未だ解明できていない部分もあります。

私は,子どもたちの脳の発達を学ぶため,福井大学の友田明美教授の研究室を訪ねました。

友田研究室では子どものこころ,脳機能,養育者支援などをテーマに多くの研究が進められており,常に研究成果を世界へ発信されています。壮大なテーマを科学的な側面から解明していかれている現実を目の当たりにし,私のチャレンジ精神をいつも刺激していただいています。

最後に,私の息子たちも学童期から青年期へと成長してきました。3人息子達は,また一つ心の成長と共に,親との関係性や親との距離感を再形成するため反抗期の真っ最中です(笑)。私も親として一段階成長できるように努力してまいりたいと思います。そして,このようなチャレンジする機会を与えてくれた家族や恩師,友田教授,講師陣に感謝し,今後も多くのことを経験し学ばせていただきたいと思います。