福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

水野 賀史

連合大学院博士課程 D2・子どものこころ診療部 病院助教


平成 27 年 4 月より、福井大学医学部附属病院の子どものこころ診療部で外来 診療をすることになった、小児科の水野賀史(みずのよしふみ)と申します。

私は名古屋で生まれ、名古屋で育ち、大学を卒業するまで名古屋に住んでい ました。医師になって、愛知県内の総合病院で小児科医として 10 年間働き、こ の 4 月、友田明美先生の下で「子どものこころ」や「発達」についての診療、 研究をするため、家族共々福井に引っ越してきました。福井に住むのは初めて で不安も少々ありますが、新しい土地での生活をとても楽しみにしています。 このエッセイの中で、私が「子どものこころ」「発達」を専門にし、福井に来る ことになった経緯についてお話をさせていただきます。

私は野口英世の伝記を読んだことをきっかけに、幼いころより医師を志しま した。そして、未来ある子どもたちのために、熱意をもって真剣に診療する小 児科医の姿に憧れ、また、まずは身体をしっかり診ることができる医師になり たいと考え、小児科医になりました。小児科では基本的には身体の病気を診る ことが多いのですが、時に「こころ」の問題が症状に関与していることもあり ます。身体の病気の場合、その症状によって、必要あれば検査を加え、診断を より確実なものにし、その診断に従って治療を行っていきます。例えば、高熱 と咳があれば、時に肺炎を疑って胸のレントゲン写真を撮影したり、血液検査 をしたりして、診断をします。そして、その上で抗生剤を選択し、治療を行い ます。原因に即した根本的な治療なので、抗生剤の選択が間違っていなければ 治療効果は明らかです。それに比べると、「こころ」の治療は一筋縄ではいきま せん。その理由は、病気の原因がはっきりしておらず、その原因に対する治療 が行えていない、ということにあると考えています。現時点における医療では、 「こころ」は目に見えるものではないため、診断は主観的であいまいであり、その診断をより確実にする検査も確立されておらず、治療においても原因に即 した根本的な治療が行えているとは言えません。実際に「こころ」の診療を行 う中で、困っている子どもたちのために十分にできていない、という無力感が 私の中で徐々に強まっていきました。その無力感から来るなんとかしたいとい う思いがこの分野を専門とするきっかけになっていたのかもしれません。

一方で、「こころ」は「脳」という非常に高度な身体的な臓器の働きを反映し たものであることは間違いありません。科学は進歩し、生きている脳の中身や 働きを実際にみることが可能になってきました。機能的 MRI という画像技術は その一つです。私は福井のこの地で、機能的 MRI を使いながら、「こころ」と「脳」の関係を探ることで、「こころ」の問題の原因究明の一助とし、診断、治 療に役立つような研究ができればと考えています。

しかし、医療の力だけで「こころ」の問題が解決できるとは到底思えません。 医療だけでは限界があるのはあきらかです。教育、福祉、行政などを含め多職 種の方々と「連携」をとって、一緒になって支えていくことが不可欠だと思い ますし、しかも、それが幼い頃から行われ、こどもの「発達」を支えていくこ とが大切です。みなさんと話し合い協力しながら、子どもたちのためになれる ことを強く願っています。一生懸命がんばりますのでよろしく御願いいたしま す!

福井大学附属病院子どものこころ診療部 水野 賀史