福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

成瀬 廣亮

連合大学院博士課程 D3

お初にお目にかかります、成瀬廣亮と申します。私は、福井大学医学部附属病院リハビ リテーション部で、理学療法士(いわゆる PT さん)として働いています。また大阪大学連合 小児発達学研究科福井校の友田明美教授のもとで、子ども達の運動機能に着目して勉強を しております。まだまだ理学療法士としても社会人としても半人前ですが、よろしくお願 い致します。

さて、皆さんは理学療法士と聞くとどんな仕事をする人だと思いますか?

理学療法士は、動くことの専門家であり、座る、立つ、歩くなど日々当たり前にできて いる運動のサポートをするのが仕事です。運動は、関節の曲りや筋肉の力などの運動機能 で構成されていますが、先天的または後天的に障害を持つことがあります。そのために自立した日常生活を送ることが難しくなり、さらに社会へ参加が難しくなる場合があります。 そんなときに、自立(律)した生活が送れるように、運動を通じて支援するのが私の仕事です。

そんな理学療法士の私が、子どものこころの分野に興味を持つようになったかを簡単に お伝えしたいと思います。

大学時代の 4 年の夏、私はある施設の臨床実習をしていました。臨床実習とは、数ヶ月 間病院や施設にいき、理学療法士のたまごとして臨床現場で実践の積むためのものです。 そこでは脳性まひをもったお子さんに理学療法を提供していました。その中で、一番印象 的であった出会いがありました。「四つ這いを 10m8 秒で進む 4 歳の A 君」です。普通の大 人が 10m を普通にあるいても 8-10 秒程度はかかります。それを、四つ這いで、大人の足 元をぬって移動する A 君。A 君は知的な遅れもあり、なかなか言うことを聞いてくれませ んでした。気がついたら、車椅子をすり抜け、廊下を滑走し、おもちゃを引っ張り出し、 私がおもちゃを片付けている隙に、歩行器に飛び乗り、さらに遠くへ。私は、彼を担当し ていました。そして理学療法士として、「A 君は将来歩けるようになるのか?」と思い、で きれば歩けるように歩く練習をしてあげたい」と考えました。そして、教科書や文献を漁 っていると「実用的な歩行にまでは届かない」という予測を立てているある論文を見つけ ました。彼の運動機能の可能性を信じていた無知な私は、愕然としました。それと同時に、 「どうしたらそんな予測が立てられるのかわからず、A 君を見てないだろう」と憤りを覚え ました。しかしながら、A 君との 2 か月あまりの時間を過ごし、私の中で「はたして彼は 歩きたいと思っているのか?」という思いも出てくるようになりました。なぜなら、歩か なくても A 君は毎日を楽しく過ごすことができているのです。このころから、運動機能だ けで答えができないこともあるのだと痛感し、理学療法を提供するときも、まずは本人や 家族の気持ちを大切にしたいと思うようになりました。福井大学に勤めだし、こころと体 の両方から患者さんを支えたいと思い臨床を行っていました。あるとき、福井大学に連合 小児発達学研究科が開校され、そこに友田先生が赴任されました。子どものこころを取り 扱うと聞き、私は迷わず門を叩き、そしてここで学ぶことができています。

最後に、私はここに来るまでに出会ったすべての子どもたちから色々なことを教わって きました。そして、がんの治療で長く入院している子、足の麻痺があり上手く歩けない子、自力では動けないまでも毎日を一生懸命生きている子、一人ひとりが、素晴らしい可能性 を持ち、輝けるチャンスを持っています。私は、「理学療法士」として、「運動」というキ ーワードでその可能性を応援するために何かできないかを毎日模索しています。