福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

滝口 慎一郎

医学研究科博士課程 D4・子どものこころ診療部 病院助教)

皆さん、こんにちは。

福井大学病院と平谷こども発達クリニックで子どもの発達に関する診療と研究をしています滝口と申します。日々の診療では、発達特性への気づきと関係機関との連携が重要と感じています。私は、現在まで小児科医として病院勤務の傍ら、保健センター等で4か月児、10か月児健診の他、1 歳6 か月児、3 歳児健診や2次健診で診察医として子どもとその保護者の対応に関わってきました。

1 歳6 か月児、3 歳児健診は母子保健法に基づき、全国すべての市町村で実施されています。加えて、ここ数年5 歳児にも健診を行う市町村が増えてきました。その理由は平成17 年に施行された発達障害者支援法で、発達障害の早期発見、早期支援が求められるようになったことです。福井県においてはまだ拡がってはいませんが、今回のエッセイでは、私が前任地で5年間経験した5歳児健診を紹介します。

5 歳児健診では、3 歳までの健診で明らかにならなかった情緒や発達上の問題、社会性の発達において困難を抱える子どもを、就学前に発見し就学後の不適応を少なくするための支援を行うことを目的としていました。私が担当していた地域では、保健師、心理士に小児科医が加わってチームを作り、市内の全保育所、幼稚園へ出向く「訪問型健診」を行っていました。チームで直接訪問し観察することで、集団場面での普段の園児の様子を多角的に非常によく知ることができました。事前の問診票から、特に観察が必要な園児をピックアップし、健診の前後で健診チームと園の先生方が直接相談し、子どもへの支援方針を決めていました。全体の20%に、保健センターでの発達専門スタッフによる個別相談あるいは専門医療機関への受診を勧め、医療機関を受診して初めて自閉症スペクトラム障害などの発達障害の診断を受けた方がいました。

5 歳児健診は、園の年中児を対象として行われるため、就学までの1 ~ 2 年の期間に、子どもが各園で丁寧な指導や専門療育機関での訓練を受けることで、多くの子どもに成長が見られました。健診での保護者へのアドバイスや支援を通じて、保護者がそれまでの育児姿勢を見直し、子どもの生活習慣が改められ子どもの情緒が安定し成長が見られたケースもありました。また、健診で子どもの発達障害に気づいたことで、就学の際に、特別支援学級への入級、通級など適切な就学先を考えるようになった保護者もいました。

子どもへの支援のために、保護者と同様に園への支援も重要でした。健診後の園への支援方法として、保健師、心理士による事後指導や事例検討会を通じて、5 歳児健診を保育所、幼稚園との相談や連携の場としていくことで、互いの連携が深まり、子どもたちへの適切な支援も行いやすくなりました。

また、病院の外来診療ではなかなか気づかれない、家庭環境の問題や親子の問題が浮き彫りになることがありました。実際に訪問して全ての園児を観察し、保育士や幼稚園教諭と直接顔を合わせての話し合いを通じて、健診で気になった園児だけでなく、先生方が以前から気にしていた家庭での不適当な養育についても相談の場となり、身体的虐待や、ネグレクト、心理的虐待などの子ども虐待への早期対応につながったケースもありました。

5 歳児健診は法制化されておらず、行政体制や保健師の負担、専門職の確保などが課題ですが、発達特性の気づきと早期支援のきっかけとして重要と考えています。発達特性をもつ方の学童期や思春期の悩みとなっている学業不振、不登校、いじめの問題への解決策は個別的で簡単ではありません。しかし、すべての子どもが自己肯定感を持ち、その子なりの個性、能力を十分に発揮して楽しく学校生活を送り、将来豊かな社会生活を送ることができるように支援していくことは、子どもの発達に関わる小児科医としての使命と感じています。

今後もみなさんのご協力をいただきながら、子どもの応援者でありたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 

福井大学附属病院子どものこころ診療部・平谷子ども発達クリニック 滝口慎一郎

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