川口 優子
連合大学院博士課程D2
2022年4月より発達支援研究科でお世話になっております川口優子と申します。現在は、奈良県に在住しながら、臨床心理士・公認心理士として大阪府庁や大阪市の児童相談所でお仕事をさせていております。
私は、高校生の時に手に取った雑誌を見て初めて心理学という学問の存在を知り興味を持ちました。しかしそこには、“日本の心理学はアメリカに比べて30年遅れている”ということが書かれてあり、であればアメリカで心理学を勉強すれば英語も心理学も学べて一石二鳥だと考え、アメリカの大学に行くことに決めました。実際はそんなにスムーズにいくはずもありませんでしたが、何とか頑張って大学を卒業しました。ですが、卒業時には心理学への興味は失せてしまい、帰国して10年ほど一般企業で働いていました。ですので、専門家としては少し変わった経歴ですが、最終的には臨床心理士になり今に至っております。
心理士になってからは、アディクションや加害者臨床と呼ばれる領域を専門としており、現在は子どもに性犯罪をして刑務所に服役し出所してきた方の社会復帰支援を中心に心理的支援を行っています。子ども性犯罪者と呼ばれる方の多くは、被虐待経験や何らかのトラウマ、障害や疾患等、様々な問題を抱えながら生きてのびてきたという背景があります。しかもそれらの問題が刑務所に服役するまで放置されていたという方も少なくありません。そして、このような“しんどい方”の後ろには、“しんどい親”が存在します。様々な理由から自分の子を虐待してしまい、その子が成人した後犯罪をして刑務所に服役する、というパターンはよくあることです。私は、犯罪加害者支援をするにあたり、“親にも支援を”という考えを常に持っています。加害者の親は被害者だからです。しかし、もっと大切なのは、誰かが加害者になり被害者を作る前に、支援の手が入るということだと思います。したがって、まずは養育者が支援に繋がり、“しんどい”状況が軽減されること、そして、養育者が支援を受けることが当然のこととなり、彼女ら(彼ら)が様々な社会的資源を活用しながら子どもを育てられるような、“親に優しい”社会になればいいなと考えています。それが、将来の犯罪者や依存症者、延いては生きづらさを抱える人を少しでも減らすことになると考えています。
したがって発達支援研究科では、友田先生をはじめ様々なバックグラウンドをお持ちの先生方から勉強をさせていただき、養育者支援について学び、一人でも多くの親御さんの力になることができれば幸いです。