福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

熊崎 博一

金沢大学

熊崎博一

平成26年2月から福井大学子どものこころ診療部で診療をしている熊崎博一と申します。よろしくお願いします。私が子どものこころの診療に携わりたいと考えるようになったのは大学2年の頃です。大学1年のときに児童養護施設で子どもたちの遊び相手をするメンタルフレンドというボランティアを1年間しました。医学部2年は授業が忙しくなることもあり、ボランティアは1年で終わりにしたのですが本格的な医学教育が始まり自分の将来について日々考えるようになり、ボランティアを1年で終えてしまったことを悔いるようになりました。児童養護施設で過ごす子どものこころの傷を少しでも癒せる、そんな医師になりたいと考えるようになりました。

医師になった数年間はまずは子どもを支える大人のこころを勉強したいと思い大人の精神科医をしておりました。そこで目にしたのが、幼少期に精神科的介入を受けなかったために大人になって社会への不適応となったケースです。特に発達障がいの中で知的能力が高いため、医療機関に関わらずに経過して、青年期に社会的破綻をきたして事例化するケースの多さには問題を感じました。発達障がいの中核症状のうち、社会相互性の障害のために、教育年齢ではいじめや不登校、青年期では職場不適応から暴力や犯罪などの様々な社会的破綻をきたし、患者や家族にとっても、そして社会にとっても深刻な問題となっていることを感じました。発達障がいを含む子どものこころの問題は早期に介入するほど予後のよいことを学び、以来“発達障がいの早期発見・早期介入”を研究テーマの一つとするようになりました。

福井大学子どものこころ診療部では“永平寺町で出生した子ども達の発達に関する追跡調査”を行っておりますが、支援を必要とする子どもを地域で早期発見し、適切な発達評価や育児への助言を行った後に専門機関につなぐことができるように体制を整備することは全国で急務となっております。発達障がいのある子どもは、早期から発達段階に応じた一貫した支援を行っていくことが重要でありますが、まだまだ体制は不十分といえます。特に乳幼児期は、ことばの発達をはじめとしたコミュニケーションの能力、対人関係や社会性の育ち、様々な認知機能の習得等、学校における学習や集団生活、その後の自立や社会参加の基盤を形成するための大切な時期です。この時期に適切な支援を受けられないと、就学後の学習面や生活面に様々な困難を抱え、また、情緒不安や不適応行動等の問題が生じてしまうと考えられます。

一日でも早くこの地になじみ、福井で生まれ育つ子どもたちの健やかな成長に医師の立場から少しでもサポートできたらと考えております。これからどうぞよろしくお願い申し上げます。

福井大学附属病院子どものこころ診療部 熊崎博一    

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