福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

椎野智子

RISTEX研究員

こんにちは。平成31年4月より福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究室に着任しました、椎野と申します。 出身は東京都で、大学から愛知県に移りました。修士までは臨床心理学を、博士からは精神医学を専攻し、研究者として名古屋大学、大阪大学、国立精神・神経医療研究センターを経て福井大学に参りました。 もともと臨床志望だった私が研究の道に進んだきっかけは、つらさを抱える患者さんとの出会いの中で「もっと効果的な治療を知りたい」という思いからでした。こころのつらさをほぐすためには、からだ=生物学的視点、こころ=心理学的視点、環境=社会的視点の多面的アプローチが必要だと考えたのです。 この目標のために、これまで取り組んできた研究テーマは大きくわけて3つあります。

一つ目は遺伝子研究です。特に精神疾患として代表的な統合失調症に関心をもち、主に統合失調症の発症に関与する遺伝子多型について解析を行ってきました。遺伝子解析というと基礎研究のイメージが強いかもしれませんが、基礎と臨床をつなげるべく、遺伝子多型と中間・臨床表現型の関連について検討してきました。また、持って生まれた遺伝子自体は変わらないものですが、その遺伝子の発現は環境要因によって変化します。このエピジェネティクスとよばれる研究領域にも関心を持っています。

二つ目は産後うつ病の研究です。産後うつ病の発症に関与する生物学的・心理社会的要因について検討してきました。うつ病の発症には遺伝と環境の両方が影響するという遺伝-環境相互作用があり、特に産後は発症リスクが高いことも報告されています。マタニティブルーズなどの言葉は広く知られてきましたが、産後うつ病についてはまだまだ知られていません。また、なぜ、どのように発症するのかも明らかになっていないことが多いのです。産後は授乳の関係上、薬物療法に消極的な患者さんが多く、心理社会的治療が重要となります。産後うつ病は育児にも大きな影響を及ぼすため、子どもの発達支援という視点からも社会的ニーズの高いテーマであると考えています。

三つ目は眼球運動の研究です。「目は心の窓」「目は口ほどに物を言う」などと表現されるように、こころの動きは目の動きに現れると考えられていて、眼球運動と精神活動の関連について神経学的視点から様々な研究がなされています。現在、精神疾患は兆候学的指標による診断が行われていますが、精神疾患に特異的な眼球運動を同定することによって客観的な診断指標が確立できると考えています。また最近では眼球運動を用いた治療的介入も多数開発されており、これらの作用機序にも関心を持っています。

臨床ではトラウマ治療を専門としています。現在は福井大学病院神経科精神科で臨床心理士として患者さんのトラウマ治療に従事しています。今日、トラウマ治療は様々なものが提唱されていますが、なぜ、どのように効果があるのかについては解明されていないことも多くあります。

今後は、これまで自分が携わってきた研究を基に、トラウマ治療の効果検証や作用機序の解明、そして科学的根拠に基づいた治療を確立することで、トラウマ臨床につながる研究に取り組んでいきたいと考えています。

よろしくお願いいたします。