福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援 研究室

梅田 亜沙子

福井大学附属病院子どものこころ診療部 臨床心理士

児童通所支援事業所 わっくる 梅田 亜沙子

みなさま、始めまして。今回は、臨床心理士の梅田亜沙子が担当させていただきます。

私は、福井生まれの福井育ちで、親戚もほとんどが福井県内にいる、生粋の福井県民です。大学の心理学科を卒業し、そのまま大学院に進学、臨床心理士の資格を取得後、“こどもの発達に特化したい”という希望から、連合大学院の博士課程(浜松医科大学校)へ進学しました。愛知県豊橋市こども発達センターで仕事をしながら大学院に通い、4年間の修業の後、福井に戻り、現在の職に就きました。今年度からは、友田先生、松崎先生のお誘いのもと、こどもの心診療部でも、非常勤で仕事をさせていただいています。

現在、私のメインの仕事は、福祉サービスの枠の中で、発達に気がかりさがあり知的に遅れのない子、いわゆるグレーゾーンのこどもを対象に、集団活動の中で必要になるソーシャルスキルやコミュニケーションの練習をお手伝いすることです。こどもたちには、『かっこいい1年生になるために勉強するところ』『道徳や学活の塾だよ』と説明し、『自分の通っている学校以外に、お友だちを作ってみよう』とお誘いしています。多くの場合、本人に困り感はなく、まわりが困っており、医療機関から紹介されていらっしゃいます。発達意アンバランスさがあるという、この目に見えない問題を、いかに本人に伝え、受け入れてもらうかは最大のテーマです。「発達障害だから・・・」と、言い訳の切り札にされてしまっては困りますし、あきらめる理由にされてしまっても困ります。見栄をはり、背伸びしたい盛りのこどもたちが、自分のできていないことに向き合うということは、本当に酷なことだとも思います。しかし、得意なことと苦手なことのあいだの差が大きく、このギャップに一番振り回されているのは、本人たちです。優秀な指導者は、相手に“できる”と信じこませることができると聞いたことがあります。能動的な探求は、自分を守り育てるための根源的な欲望であり、これをどうひき出すか・・・カッコイイことへの憧れが、こどもたちに力を与えてくれると信じて、『君にもできるよ!』というメッセージを伝え、苦手なことに向き合う背中を支えていきたいと思っています。臆病な子の好奇心が顔を出す瞬間、不器用な子が懸命に試行錯誤している瞬間、こどもたちの自尊心に触れている気がします。臨床心理士として、この瞬間が好きです。

しかし、この発達と言う分野には、正解がありません。支援者として、進むべき道が分からなくなる時もあります。私たちは、正解のない道をただ、こどもの可能性を信じて進んでいくしかありません。恩師の『ASDの支援がしたいなら、(症例を共有する)数をこなすことだ!』『ASDの支援者なら、こどもから成人まで対応できて、やっと一人前だ!!』という教えを胸に、ASDの支援を志す者として、こども〜成人まで、知的に重度の遅れがある方〜知的能力の高い方まで対応できるようになりたいと思い、いろいろなところに出向いて研鑽を積む毎日です。療育はチームです。決して1人の力で行えるものではありません。その子をとりまく、たくさんの人の協力があって、はじめて成し得ることだと考えています。また、療育に依存することなく、地域で生活していくための1つの支えとして“療育”が機能して欲しいとも思います。多角的な視点からの評価と支援を実現するために、是非、是非、連携していきましょう。福井に療育仲間をたくさん増やしていきたいと思っております。質にこだわるASDの支援者仲間が1人でも増えますように・・・研修会などでお会いすることがありましたら、気軽に声をかけて下さい。